今やネット検索でレシピが簡単にわかる時代ですが、昔は「本」が当たり前だったんですよね。だから、お金を出して買ったり、図書館で借りたりしなければレシピなんて知ることができなかった。
料理本は歴史を遡れば古代からありますが、ネット普及直前、つまり1990年後半~2000年くらいに発売されている料理本は本当に優れたものが多いと思います。文章が細やかで、写真も美しく、そして手に取りやすいという。
私はその頃にドンピシャで栄養学生、そして調理専門学生だったので、その時代の料理本をたくさん持っているんです。それらは今でも廃れることなく私の教科書として手ほどきをしてくれています。
その中でも、料理研究家の山本麗子先生の「101の幸福なレシピ」「101の幸福なお菓子」という2冊に与えられた影響はいまだに大きく感じます。
この2冊は栄養学校に進路を決める前、まだ料理がただの趣味だったころに出会った本ですが、それからずっと、学校を卒業しても、社会人の間も、そして現在の主婦業の中でもまだまだ教わることがたくさんあります。
今回はその2冊と著者である山本麗子先生についてお話しします。
山本麗子先生について
宮城県出身の料理研究家で、きょうの料理やキユーピー3分クッキングなどで活躍しておられます。料理教室やお菓子教室の主宰、軽井沢でカフェプロデュースなどされています。
1990年代のきょうの料理を読んで育った私にとっては、本当に「先生」と呼ぶべき存在です。
当時から栗原はるみ先生や小林カツ代先生、平野レミ先生は人気の料理研究家でしたが、私は山本麗子先生の料理が一番好きでした。家にある材料で作れる家庭料理なんですけど、どこか「非日常」な感じがあって、まだ10代だった私は「美味しそう、しかもきれい!」と食い入るように読んだものです。
山本先生の料理やお菓子は美味しさが見た目にしっかり出ていて、最近多い「無駄におしゃれ」な感じはありません。味と見た目が比例していると言ったらよいでしょうか。
書籍の中でも美味しいものへの探求心やこだわりが強く感じられて「ああ、料理研究家ってこういう人がなる職業なんだな」と感動したものです。
つまり、私のようなただの料理好きに「食べ物を仕事にすること」の意味を教えてくれたと言っても良いくらいの先生なのです。
101の幸福なレシピ
こちらは1994年に出版された料理本。しょっぱなから鶏のから揚げ、かつおのたたき、豚丼、餃子と空腹時閲覧注意な料理が飛び出してきます。
今では当たり前にペーストが売られているタイカレーのレシピを初めて見たのは、確かこの本でした。
内容も手の込んだものから何もしたくないときの簡単料理まで様々。
やっぱり割合としてはごちそう感のあるものがメインで、大皿盛りしてみんなで取り分けて食べるような料理が特に美味しいです。
この本を買ったのは私が16,7歳、つまり高校生の頃ですから、毎日家計をやりくりして、他の家事と時間配分をしながら料理する大変さを知らない年頃です。(高校生で2000円弱の本を買うって、結構な出費でした)
そんな頃にこの素晴らしい本に出会ってしまったせいで、休日は家の食材を勝手に使って台所を何時間も占拠して料理したものでした。親にしてみればありがた迷惑だっただろうな……。
でも、その経験こそ、今の私に「手抜きせずに美味しいものを作って食べる喜び」を与えてくれているのです。必要に迫られてから料理を始めたのだとしたら、ここまで時間はかけられなかったと思う。
さっきAmazonで見たら、新品には7000円の値がついているのですね……。絶版前に買っておいて良かった……。20年前だけど!
101の幸福なお菓子
幸福なレシピの2年後に出版されているお菓子だけのレシピ本ですが、実は私が買ったのはこちらが先です。やっぱり自炊の必要が無い環境だと、料理よりお菓子作りに興味が湧くのは女子の常ですよね。
恐らく出版直後であろう冬に、バスを待ちながら駅ビル内の本屋で立ち読みをしていて一目惚れして買ったことを今でも覚えています。この本が素晴らしすぎて、その翌週くらいに幸福なレシピの方も買ったんだった。
私はこの本で、「ちゃんとした材料を使わないとお菓子は美味しく作れないんだな」ということを学びました。
量をきっちり計る、ふるったり室温に戻したりなどの下処理はちゃんと行うというくらいは意識していましたが、チョコはクーベルチュールではなく割チョコ、バターは製菓用マーガリン、生クリームは安い植物性、バニラはビーンズどころかオイルも手に入らずエッセンスで済ませていたんですよね。中高生はお金がありませんから……。
これをちゃんとした材料に切り替えたら、味が全然違う!ただ、コスパはぐんと悪くなったので作る回数は減らすことになりました。でも、あまり美味しくないお菓子をしょっちゅう食べるより美味しいものをたまに食べる方が断然いい。
しばらくヴァローナのチョコレートにハマって、お年玉を注ぎ込んで通販で買ったもの!1kg!これはバレンタインの振る舞いチョコとして加工されました。(友チョコという言葉は当時ありませんでした)
もう一つ印象深い思い出として、シュークリームがあります。
シュークリームと言えばご家庭で作るお菓子の定番なのでどのお菓子本にもレシピが載っていますが、どれも微妙に分量が違ったり、仕上がりの写真が違ったりしますよね。
私も何度も失敗して、思うようにいかない理由を考えてみたりしました。
でも、山本先生のシュークリームは、必ず腰高にこんもり膨れた皮が焼けるんです。
初めて見たのはこの101の幸福なお菓子ではなく、きょうの料理のお菓子コーナーに記載のレシピだったと思うのですが、間違いなく山本先生のレシピでした。それが同じく101の幸福なお菓子に載っているのを見て「ああ!」と思ったものです。
最近はお菓子作りをしても消費しきれないのでめっきり機会は減りましたが、今でも暇な時に本を開いて夢を馳せることがしばしばあります。
ちなみに、こっちは新品本が20,000円!マジか!
本当におすすめの2冊です
料理本への愛が溢れすぎてしまった感がありますが、この2冊、本当に好きなんです。
せっかくなので、どれくらい使い込まれているかご覧ください。
あまりにも汚いので画像を極小にしました……。それだけ使い込んでいるんですよ。
家でただ読み物として読む本はこんなに汚れませんが、常に台所で開いておいたり、(献立作成に使うので)学校や職場に持って行ったりすることも多かったんですよね。
中身はそれほど汚れていないので、これからも現役で頑張ってもらおうと思います。
(余談ですが、この2冊を企画・編集された川津幸子さんという方の料理本も何冊か持っています。こちらはもっと敷居が低い感じで、山本先生の本のようにトリップはできませんが、現実的に毎日の料理に使える実用的な本です。)
しかしながら、こんなにいい本が入手困難だなんて残念です。これから料理やお菓子を覚えたい人のためにも復刻版の発売を切に願います。
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