食中毒。栄養士、管理栄養士として働いたことがある人なら、背筋が凍るワードだと思います。
私もその一人で、既にフードサービス業から遠ざかっているのに、今くらいの時期になると頻発する食中毒報道を見るたびヒヤリとしてしまいます。
当たり前ですが、食中毒はご家庭でも起こります。
感染人数が小規模というだけで、菌やウイルスの脅威はどこにでもあるのです。
せっかくだから、今の時期に気を付けておきたい食中毒対策についてお伝えします。
食中毒予防の三原則
食中毒予防の三原則というものがあります。
それは、「付けない」「増やさない」「やっつける」!
病原体を食品に付けない、万が一付いてしまっても繁殖させない、そして加熱や消毒によってやっつけてしまうという意味です。
家庭でも、集団給食の現場でも、これらを押さえるのが基本です。
ここでお話しするのはどれも難しいことではありませんし、「それくらい当たり前にやっとるわ!」と言われることかもしれません。
でも、自分への戒めも兼ねてまとめさせて頂きました。
【付けない】調理前、調理の合間、食事前に手を洗う
食中毒を引き起こす病原体は主に手指から伝染します。
もちろん空中落下するものもありますが、それよりも人の手を伝うケースの方が多いのです。
土や糞便などから、生の食材から、そして己の体液が手指に付き、それで触れた食品に入るという経緯です。
これを防ぐためには手洗いを頻繁に、そして完璧にすること。チャッチャと水洗いではいけません。
汚れ落ちの良いお湯を使い、石鹸やハンドソープを使って爪の間まできれいに洗いましょう。
調理前はもちろん、生肉や土付きのものを触った後も次の作業に入る前に手を洗うべきです。
調理中にトイレに行った場合は、より念入りに!アルコールなどで消毒するとなおよし。
もちろん、食事前も手洗いを!ご家族も一緒にね。
あと、手洗い場のタオルもこまめに替えましょう。
【付けない】手指に傷があるなら手袋着用を
食中毒菌の一つである黄色ブドウ球菌は、人の身体に常在しています。
特に、切り傷や擦り傷などに潜伏しやすいため、手に傷があると食中毒リスクは何倍にも上がってしまいます。
これを防ぐためには傷がある手に傷を作らないのが一番ですが、どうしても「うっかり」で傷付くこともありますよね。
そんな時はしっかり傷口を消毒して、適切な処置をしてから手袋を着用して調理作業に入りましょう。
これで傷からの細菌感染は防げますが、手袋が破れると何の意味もありません。破れたらすぐに新品に取り替えて下さい。
【増やさない】最終加熱工程を終えた食品は常温放置せず冷やす、またはすぐ食べる
もうこの先加熱することが無い食品は、熱いうちに食べるものはすぐに食べ、冷やすものは氷水に浸したりして急速に冷却し、熱がとれたら冷蔵庫に入れるなどして下さい。
菌やウイルスによって差異はありますが、一般に15~40℃の範囲が繁殖適温とされています。
この温度帯をなるべく短くするように、熱いものはぬるくなる前に食べる、冷たくするものは一気に15℃以下に下げる必要があります。
夏場の室温は特に高くなりやすいため、ほんの少しの菌やウイルスが短時間で爆発的に増えるなんてこともあり得るからです。
夏にパン作りをすると、発酵器に入れなくても旺盛に発酵することからわかりますよね。
カレーや汁物も、その日食べない分はすぐに氷水に当てて熱を取り、冷蔵庫へ!
そして翌日以降に食べる時は、しっかり75℃以上に再加熱して、早めに食べきります。
【増やさない】買ったものはすぐに冷蔵庫にしまう
肉や魚はもちろん、野菜類もあとで加熱するとしてもなるべく低温の状態で保管しなければいけません。
冷やしておかないとそもそも腐る原因になりますし、常温管理によって毒素を出す病原体が繁殖してしまうと、加熱しても食中毒を引き起こしてしまうからです。
ですから、買って帰って一息ついてから冷蔵庫にしまうなんてことは絶対にNG!帰ってきたらそのまま冷蔵庫に直行してしまい込む習慣を付けると良いですね。
遠くに買い物に行くときは生ものの購入は控えるのがベストですが、どうしてもという場合は氷で保冷したり、一緒に凍ったペットボトルジュースを買うなどして保冷剤代わりにしたりしましょう。
【やっつける】肉や魚の中心温度をキッチリ上げる
肉や魚などの料理は、中心温度が75℃以上の状態を1分以上キープすると安全とされています。
薄切り肉の炒め物ならそれほど神経質にならなくてもしっかり焼き付ければ温度を上げられますが、厚みのある肉系、そして衣が付いた揚げ物などは目視では難しいところ。
また、コロッケや春巻などの加熱後に成形して揚げるものも、具を混ぜる段階で病原体が付いている可能性があるので、最後の揚げの段階で中心まで高温にしておいた方が安心です。
温度のあがり具合は勘で行うと危険なので、キッチン用の温度計で中心温度を確実に計測しましょう。
↓のようなデジタル温度計が便利。
ただ、丸洗いできない温度計が感染源となって食中毒になる可能性もあります。
使用後は洗えるものはちゃんと洗い、難しければ汚れをしっかり拭き取った後にアルコール消毒をしましょう。
【やっつける】熱湯、またはアルコールや塩素系消毒液を活用する
使った調理器具、ふきんや調理台などは、洗剤で洗うだけではなく、煮沸消毒したり、アルコールやハイターなどの塩素系消毒液をフル活用して殺菌消毒するのがベストです。
ちゃんと洗ったつもりでも見えない汚れが残っている可能性がありますし、高温多湿状態で保管した調理器具に雑菌が付いていることがよくあるからです。
せっかく安全な管理をした食べ物を調理するのに、器具のせいで食中毒を起こすなんて残念極まりないですよね。
【おまけ】他人の「これくらい大丈夫」を過信しない
最後は三原則から外れるポイントになります……。
私の意見ですが、高齢者は比較的衛生管理が甘い人が多い。
高齢の親がいる実家に帰ったりなんかすると、「これくらいで死にはしない」とか、「まだ食べられる」とか、「食べ物を粗末にするな」とか、あれこれともっともらしい意見を述べながら怪しい食べ物を食べさせようとしますよね。
これ、危ないです。
勧めている本人は食べても平気かもしれませんが(日常的にそういうものを食べているせいで耐性があるのか)、そうではない人もいます。
ですから、自分は食べて大丈夫だったを根拠に食中毒リスクのあるものを他人に勧めてはいけないのです。
勧められる側も、相手の衛生状況を探りながら判断できるようになって下さいね。
学生時代を思い出しながら食中毒予防を書き出してみました
ここに書いた内容は、学生時代に勉強したことをベースにしています。
もちろん卒業から十数年も経過しているので、私が持つ知識は最新ではありません。が、それは現役で集団給食現場で働いている友人に確認を取りながら修正しました。
猛暑の中、食中毒リスクを下げるために是非心がけて下さいね。
ということで今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございます。
コメント