今日3月17日はアイルランドの祝日「セントパトリックスデー」。
アイルランドにキリスト教を広めた聖人、聖パトリックの命日で、アイルランドはもちろん、アメリカのアイルランド系移民の多い地域でも大規模なお祭りが開かれるそうです。
日本ではあまり馴染みのない祝日ですが、今日はこれに因み、アイルランド料理を作ります。
と言っても、厳かに高い意識を持って作るものではなく、いわゆる漫画飯!
アイルランドからアメリカのカリフォルニアを目指す少女が主人公の「片喰と黄金」という漫画作品より、初回から登場する料理「アイリッシュシチュー」を作ります。
「片喰と黄金」はこんな漫画
これは、主人公の少女と従僕の少年が、飢饉に襲われるアイルランドを出発し、同時期に発生したアメリカ合衆国のゴールドラッシュに乗じて大富豪になろうと旅する物語。
アイリッシュシチューが登場する「片喰と黄金」、あらすじだけ書くと何だか愉快な旅のように思えます。実際にコメディ満載の楽しい作品なのは間違いないですが……。
しかし楽しいだけではなく、飢饉時のアイルランドの悲惨さ、移民船の過酷さ、アメリカに着いたら着いたで人種差別や奴隷問題、先住民問題などなど、この時代の歴史的背景を踏まえた困難が目白押し。これを知ることができるだけでも読む価値のある漫画です。
重い話もありますが、読後感は爽快で本当にいい作品だと何度も読み返しています。
ちなみに、最初はウルトラジャンプで連載されていて単行本も出ている作品ですが、途中で打ち切りとなり(とても面白いのに!)、講談社系のWEBコミックアプリ(コミックDAYS、マガポケなど)にて連載が再開されています。
連載再開されて本当によかった!!
イリルさんちのシチュー(完全版)を作る
この作品の第一話に、主人公のアメリアと従僕コナーが出会う親切な大人、イリルさんというおじさんがいるのですが、作中にそのイリルさんちで振る舞われるシチューの解説があります。
これが私たちの知っている白や赤や茶色のシチューとは異なる、アイルランド風の「アイリッシュシチュー」というもので(実際作中で食べたのはじゃがいもの塩煮だけど)、家庭料理の定番らしく簡単に作れそう。
今回は、このアイリッシュシチューをイリルさんち風の具材で作ってみます。(ついでにじゃがいもの塩煮も)
作中では説明だけで実際に作られることは無かったのですが、材料だけは紹介されている。
材料は、
- マトン
- ジャガイモ
- セロリ
- キャベツ
- タマネギ
- パセリ
- ニンニク
- 塩・コショウ
となっています。でも実際は飢饉の真っただ中なのでこんな豪華な材料は揃えられず、辛うじてあった種イモサイズのジャガイモを塩ゆでして食べる……という展開。
なお、一般的に見るアイリッシュシチューには人参が入っているものが多いですが、イリルさんちのは入らないらしい。
上記の通りの材料を揃えました。分量は記載されていないので適当です。
ただ、マトンが手に入らず、ラムの肩ロースブロックを近くの肉屋で買ってきました。ジンギスカン文化がある北海道では、ラムなら割と手に入りやすい。
作り方も記載がないため、一般的なアイリッシュシチューの作り方に則ってやってみます。
ラム肉は大きめ角切り、ジャガイモは一口大、玉ねぎ、にんにくはスライス、セロリは2cmくらいの幅に、キャベツはざく切り、パセリは葉をみじん切り。茎も煮るときに入れちゃいます。
鍋に野菜の半分と肉の半分を並べ、パセリの半量を振って塩こしょうして、残りの野菜、肉、パセリ、そして上にパセリの茎を置いて最後に塩こしょう。
そしてかぶるくらいの水(今回は鍋が小さく具が溢れそうなので、水は鍋7分目まで入れました。)
これを火にかけ、沸騰したら弱火にして蓋をして1時間以上コトコト煮る。水が足りなくなったら足す。
煮ている最中、羊、パセリ、セロリ、にんにくの香りが一体となり、普段の日本の食卓ではまず嗅げない異国の香りでいっぱいになりました。この具材のポトフはよくやるけれど、肉が鶏や豚から羊になるだけで、全く違う香りになるのですね。
一時間ほど煮ました。
最後に塩こしょうで味を調えて、パセリの茎をよけて、イリルさんちのシチュー(アイリッシュシチュー)は完成です!
アイルランド風肉じゃがとも言われるアイリッシュシチュー、野菜がクタクタになるほど煮るものだそう。
だから、野菜全体が煮崩れているこの状態でいいのよね?
盛り付けて頂きます。
イリルさんのこだわりにより人参ナシの地味色シチューですが、香りはいい感じ。
1時間煮た程度だとラム肉はほろほろまではいかず、でも筋がとろけるくらいに柔らかく煮えています。
羊特有の香りはありますが、香味野菜と一緒になると美味しい香りに変化するんですよね。肉はうまみが強く、塩こしょうでしか味付けしていないのが不思議なくらいしっかり味がある。
野菜はクタクタで、どれがキャベツか玉ねぎか、セロリかわからなくなっているものの、とろっとろで甘くて美味しいです。
野菜とラムの出汁がしみたジャガイモもまたいい感じ。
アイルランド風肉じゃがと呼ばれるのがわかる、素朴で身体にしっくりくる味わいでした。
ごちそうさまでした。
ついでにイリルさんちのシチュー(飢饉版)も作る
ついでに、作中で実際に食べたジャガイモだけのシチュー、つまりジャガイモの塩煮も作ってみます。
使うのは種芋サイズのジャガイモ2つ!
これを皮ごと一口大に切って、塩水で煮る。以上です。
ジャガイモが柔らかくなったら完成です。汁にも飢饉時には貴重な栄養が溶けだしているので、汁ごと頂きます。
うん、ジャガイモの塩煮だ。北海道ではおやつとして食べる家庭もある、食べ慣れた味。
汁もただの塩水よりは芋の風味が溶け込んでいて、まあ飲めます。
すっごく不味いものではない。さっきの通常版のアイリッシュシチューに比べれば当然物足りなさはあるけれど、雑草の汁を啜って飢えを凌いできたアメリア一行にはご馳走だったようです。
飢饉を生き抜くとはどういうことか考えさせられる
飽食の時代に生まれた私には想像もできない飢えとの闘いとはどんなものだろう、と、考えさせられる第一話。
第一話でもちらりと触れられますが、話が進むともっと過酷なエピソードも語られます。昏睡状態に陥ったアメリアがどうやって飢えを切り抜け、アメリカに旅立つ力を付けたのか。
きっと、こういうことは飢饉が起こった世界中であったのだろうなと、改めて思い知りました。
それでも希望を捨てずに進んでいく物語は爽快で、強く生きる力を感じられて、漫画とは言え大人の心にずしっと響く作品です。
歴史漫画好きさん、アメリカ開拓時代好きさん、そして元気になりたい方におすすめの漫画です。
興味のある方は是非読んでみて下さい。
ということで今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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