ちょっと前に、「発酵食品にロマンを感じる」ということを書いた日があったと思います。
発酵食品のひとつであるチーズにも強い憧れがあるのですが、これはなかなかハードルが高い。
厳密な温度湿度管理や衛生管理が必要なことのほか、「レンネット」の入手が困難、という理由があります。
レンネットというのは一般的なチーズを作るのに必要な酵素で、一般人にはなかなか手に入らないものなのです。だってねぇ、家でチーズ作りをしようなんて人は少ないですよね。
そんなレンネット、賞味期限切れ間近ということでとても安く買うことができました!
今回はこれを使ってモッツァレラチーズを作ってみました。売っているようなものにはなりませんでしたが、美味しいものができたので良しとします!
ラクトベジタリアンにも安心、植物性レンネット
今回使用するレンネットは、発酵食品やその材料、製造に便利な道具類などを取り扱っている「かわしま屋」さんから購入しました。
1g入りで、送料込み340円。これは定価の半額なのですが、賞味期限が6/10までということで今だけの特別価格だったのです。お得でした!(実際にチーズを作ったのは6/4です)
たった1gしか入っていませんが、計算上はこれだけで100Lの牛乳を固める力があるそうです。でも多めの方が失敗しにくいとのことで、家庭で作るならせいぜい10L分というところでしょうかね。
なお、こちらのレンネットは植物性です。
古来からある動物性レンネットは子羊の胃袋から取るので、動物の命を奪うもの全般NGの(乳製品OKの)ベジタリアンの人には避けられているそうですが、植物性レンネットなら大丈夫なんだそうです。
自宅で作れるのはモッツァレラチーズが限界
ではチーズを作っていきます。レンネットに添付の説明にもある通り、家庭で作るのならモッツァレラチーズが推奨されています。
やっぱり長期熟成が必要だったり、カビを吹き付けたりするチーズは無理があるか……。温度湿度が一定の洞窟とか、家には無いしね……。
あと、説明書には書かれていませんでしたが、念のため前々日くらいから納豆は断っています。
パンの天然酵母も麹作りも納豆菌が入ると駆逐されてしまうので、本当に念のため。(漫画「銀の匙」にもそんなことが書いてあった気がする)
準備
まず材料。今回は、せっかくなので添付レシピの2倍の量で作ります。
メインとなる低温殺菌の牛乳2リットル。低温殺菌乳でないとうまく固まらないそうです。
札幌圏だと、コープの山中牛乳が手に入りやすいと思います。あとは、お店によりますが、イオン系のお店でサツラクの低温殺菌乳が買えます。
副材料はクエン酸3g、そしてレンネット0.4g。レンネットは多い方がうまくいくらしい。ということで多め使用です。
続いて道具。ボウルやお鍋などのほか、耐熱手袋、ゴム手袋、温度計。本当は軍手も重ね履きするといいそうですが、このcottaの耐熱手袋なら軍手なしでも80℃に耐えられました。
そして保温のため低温調理器を用意しました。ヨーグルトメーカーなども使えるようです。無くても細かく温度を計測すれば作れると思います。大変そうですが……。
結果から言うと、お湯や水を足して温度調節すれば、保温道具が無くても作れそうです。
あと、0.何グラム単位のレンネットを計量するため、小数点以下の秤が欲しいところです。うちのは小数点第二位まで計れるもの。
作っていきます
レンネットを0.4g計り、小さじ2杯のお湯にときます。熱湯だと酵素が失活してしまうので35℃くらいのぬるま湯です。
牛乳を鍋に入れ、ごくごく弱火で35℃になるまで温める。直火ですが、40℃以上にならなければ、そこまで厳密に温度管理しなくて良いそう。
温まったら鍋を火からおろして、低温調理器(35℃)をセットしお湯を温めた大きいタライに移します。(プラスチックのたらいですが、高温にしないので大丈夫)
続いてクエン酸を入れます。粉のままでいいみたい。よく混ぜて、35℃をキープした状態で10分くらい置く。この時点で、カッテージチーズを作るときのようなモロモロ状態になってきます。
ここでお湯溶きレンネットを加えて混ぜる!さらに5分置くと、固まってきた!
固まったらナイフを使って2cm角に切る。絹ごし豆腐のようです。
低温調理器の温度設定を58℃に上げ、5分くらいかけて40℃までお湯の温度を上げます。温度設定を高くしないと時間がかかりすぎるため。
牛乳が入った鍋の温度が40℃になったら、それ以上温度が上がらないように鍋をお湯から出したり、たらいに水を足したりして、染み出してきた水分(ホエー)をおたまで掬い取ります。
ホエーは豚がいれば飲んでもらえるのですが、生憎いません。そういう場合はカレーやシチューに使うといいらしいです。
が、せっかくホエーが大量にあるのですから、まとめて再加熱してリコッタチーズにもチャレンジします(明後日更新予定)。
抜けるところまでホエーを抜いたら、このまま35℃まで温度を下げながら40分くらい発酵させる。
発酵時間の見極めが難しい……。途中、何度か上下を返します。待っている間に鍋にお湯を沸かします。
40分経ったら、固形分(カード)の破片をちぎって80℃の熱湯に浸けて、伸びるようになっているか確認。多少伸びているような気がする、ここで発酵完了としました。(結果的にもっと長く発酵させるべきでした)
ここから練りに入ります。
大きいボウルに80℃のお湯をたっぷり入れておきます。手には耐熱手袋、ゴム手袋の順にはめておく。
鍋にカードにお湯を少々注ぎ、ひとまとめにします。(ここである程度まとめないと、熱湯ボウルに入れた時に散ってしまう)
この塊をお湯に浸して練っていきます。相当熱いかと思ったら、意外といける。耐熱手袋、優秀。でも袖や顔にお湯が跳ねると熱い。火傷に気を付けましょう。
周りに水がかなりこぼれるので、タオルで拭きながら作業。
元は牛乳なのに、お湯に溶けてしまわないのが不思議ですね。
艶と粘りが出るまで練るとあるが、10分くらい捏ね続けても、まだまだぼそぼそしたところがある。
お湯の追加が無くなったところで諦め、丸めて氷水に入れて冷まします。表面がでこぼこしているのは手袋のエンボス加工のせいです。
冷めたらモッツァレラチーズの完成!2リットルの牛乳から261gしか取れなかった!
ここでちょっと味見。やっぱり市販のよりも滑らかさに欠ける。でも味はいい!
塩気が全くないので、牛乳の味そのままのチーズです。クエン酸が入ったけれど酸味は無く、まろやか。そして、新鮮だからなのか、市販のモッツァレラのような酸っぱい匂いもありません。(発酵不足ってことかも?!)
次回は、長めに発酵時間を取るようにします。(うちにあるチーズの本によると、2時間くらい発酵時間を取っても良いようです)
カプレーゼやチーズトーストにして食べてみます
できたてモッツァレラは、トマト、バジルと、オリーブオイルをかけてカプレーゼにしました。
まさに牛乳を凝縮した味のモッツァレラチーズが香ばしいパンと甘酸っぱいトマト、爽やかなバジルの香りによく合います。塩気が無いので塩を振ると味が締まってより美味しい。
素人が作ったものなので専門店のチーズよりは劣るかもしれませんが、まさにフレッシュチーズ、という味わい。とても大変だったけど、大満足です。
翌朝、残りをパンにのせてトーストしてみました。
が、モッツァレラなのにほとんどとろけたり伸びたりしません。チーズそのものの味は良いのですが、のびーーーる食感が欲しかった。
でも、多少は粘りがあって、カッテージチーズを固めたものよりはもちもちしています。
そして噛むほどに広がるミルクの風味が美味しい!塩気のきいたパンによく合いました。
塩水に漬けて冷蔵庫で一週間くらいもつそうです
あの量の牛乳からできるモッツァレラチーズの少なさにびっくりしましたが、その日に食べきれない場合は塩水に漬けたり、そのままラップで巻いたりして冷蔵庫におけば一週間くらいもつそうです。
今回はカプレーゼとトーストで食べきりでしたが、塩水に漬けた方が味が加わって美味しかったかも。
製造過程で80℃の熱が入っているし、すぐ腐るということはないでしょう。
【後日談】
今回作ったほか、数日後にもう一回モッツァレラチーズ作りにチャレンジし、レンネットは使い切りました。
二回目はなるべく長めに発酵時間を取ったのですが、二回目の方がうまくいきませんでした。発酵させすぎだったのか、お湯で練るときにモロモロになってしまったのです。(押し固めれば美味しく食べられました)
同じく山中牛乳を使ったのですが、この牛乳の75℃殺菌では高すぎるのかしら?65℃殺菌の他メーカーの牛乳を使った方が良かった?
またレンネットを入手する機会があったら違う牛乳でチャレンジしてみます。
低温殺菌乳でも牛乳消費の手助けになるのか?
今回、合計4リットルの牛乳を消費したわけですが……。
少し前まで牛乳の消費を促す呼びかけが盛んにあったので、今後そういうことがあったら家でチーズを作ればいいのでは?と考えて、いや、低温殺菌乳じゃ給食の牛乳(130℃2秒殺菌)の余剰を消費することにはならないかも……と思い直しました。
実際どうなんでしょうね?給食の不安定で生じる牛乳余りって、生乳が余っているということなのか、それとも高温殺菌してしまったものが余っているということなのか……。
ちょっと、今度調べてみます。
ということで今回はここまで。
明後日にはリコッタチーズを作ってみた記録を載せます。
コメント