北海道、それも比較的自然が多い地域にお住いの方なら、春休み前になると必ず「エキノコックスに注意」という紙が配布されていたという記憶があるはず。
地方にお勤めの知人によると、今でも小学校などではその類の注意書きを配布する指導が続いているのだとか。
この「エキノコックス」、子供の頃はわかりませんでしたが、大人になるとその厄介さをかみしめるようになりました。
今回はそんなお話です。
エキノコックス症とは
北海道では単に「エキノコックス」と呼ばれていますが、これは寄生虫そのものの名前。この寄生虫に感染することで発症する病気がエキノコックス症です。
エキノコックス幼虫は野ネズミなどに寄生しますが、それをキツネや犬が食べると成虫になり、宿主の糞尿から虫卵を排出させます。
その虫卵が付着したものを人間が食べると10年以上の時を経て卵が孵り、成虫となり「エキノコックス症」を発症させるのです。
エキノコックス症は体内で長期の潜伏期間を経て肝臓や肺などに病巣を作り、肝機能障害、結核に似た症状などを引き起こし、治療しないまま放置すると70%が死に至るとも言われている病気です。
こんな恐ろしい病気が、北海道では身近にあるのです。
なぜなら、エキノコックスの宿主となるキタキツネが生息しているから。
もちろんキタキツネだけではなく犬やタヌキも宿主となり得るため、道外にエキノコックスが皆無というわけではありません。
ですが、患者数の割合から言うと、北海道が圧倒的多数だそうですよ。
今でも北海道内では年間十数名の感染者がいると報告されているほどです。
エキノコックスのせいで不自由していることあれこれ
子供の頃は、「生水を飲まない、キツネに触らない、外出後は手を洗う」くらいの注意事項しか意識していませんでしたが、大人になるとそれ以外にも気を付けたいことがたくさん出てきました。
そんな点をいくつか、語らせて下さい。
沢の水が飲めない
つまり「生水を飲まない」ということですが、本州の旅番組などで湧き水や沢の水を美味しそうに飲んでいる映像を見ると、「北海道ではこんなことできない!羨ましい!」と思うばかりです。
自然が一杯の北海道では、湧き水や人の手の入らない清流がたくさんあります。が、どれもそのままでは飲めません。
エキノコックスは熱で死滅するので、煮沸すればエキノコックスの危険が排除できるのですが……。
湧き水は酸素が多く含まれ、それが美味しさに直結していると聞いたことがあります。
それを沸かしてしまったら、酸素も抜けてしまいますよね。
こんな美しい川の水を手で掬って飲んでみたいよ……。
ちなみに、京極町の「ふきだし公園」では、湧き水を虫卵を通さないフィルターにかけているそうなので、エキノコックスの心配は無いのだそうです。
山菜を生食できない
キタキツネが生息する山野に生える山菜の類もエキノコックスに汚染されている可能性があります。
山菜はそのままではアクが強いものが多いので、生食はまずしない……と思っていたのですが!!
私がよく行く山菜採りスポットの水辺に、大量のクレソンが自生しているのを発見したのです。
クレソンと言えば生。生にマヨネーズです。……が!野生のものは生食は恐ろしくてできません……。
野生のクレソンはお浸しにしたり油炒めにしたりと、加熱調理して食べるしかないのです。
でも、クレソンはやっぱり生ですよね……。
スーパーで買うと高いんですよ、あれ。
キタキツネがうろついた後の畑の野菜が危ない
人に慣れたキタキツネは抵抗なく人里に下り、食べ物を漁ります。
住宅街でキタキツネを見たことがあるという人、結構いますよね。
郊外だけではなく、中央区でも目撃情報があります。中心部では植物園近くと北大の畑地が多いですね……。
このように、住宅街にもキタキツネが存在しているということは、家庭菜園などの野菜にも接触される、つまりエキノコックスの危険があると考えられるのです。
さすがに野山の山菜よりもリスクは低いですが、0ではないのが怖いですね。
うちの近くでもキタキツネをたまに見かけるので、家庭菜園産の野菜はこれでもかってくらいに洗ってから食べます。
キタキツネを駆除すると内地の人に「人でなし」扱いされる
昨年あたり、清田の公園にキタキツネが居座るという報道がありました。
子供には近づかないように注意させ、キタキツネを外に出し、フェンスを張るなどの対策をしても乗り越えて戻ってくる。
様子を見ながら数日経っても去る気配がない……ということで、駆除の必要性について論じられていました。
キタキツネの駆除に関し、北海道民の私や周辺の人は「かわいそうだけど仕方ないことだ」と考えていたのですが、内地(本州以南。敢えてこう言わせてもらいます)の人の中には「かわいそう、人間の身勝手で命を奪うのか」とか、「動物の生きる場所を奪ったのは人間の方だろう」などのなんともお優しいご意見が多い。
それをネットニュースか何かで読んで、本当に腹が立ちました。
あなたたちは自分や家族が大きな病気にかかるリスクがあってもそう言えるのかと。
害獣と呼ばれる動物の命を全て助けるのかと。
つまるところ、常にエキノコックスのリスクにさらされている北海道民の認識は、リスクの少ない地域の人から見れば「人でなし」ってことですね。
キタキツネって顔がかわいいから、感情だけでそんなこと言っちゃうんだろうな~という気持ちもわかりますが、こちらは自分や家族の命がかかってるんですよ!
春休みにはまだしばらくあるが、対策法と知識はしっかり付けておきたい
後半、愚痴になりましたが、とにかく北海道に住む、または旅行するならエキノコックスには気を付けてということです。
生水は飲まない、キタキツネには接触しない、を厳守しましょう!
感染したら(検査しなければ)発覚するのは10年以上先ですよ!!
ということで、今回はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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